3Dモデルを作成する

ソフトがインストールできたら、さっそくモデリングを始めていきます。

このページでは、ほとんどの車両MODが持つことになる 車体、台車、車輪、内装 の4種類のオブジェクトを作成します。台車と車輪は車体とは独立した動きを持つため、個別にオブジェクトとして作成する必要があります。また、半透明な面(窓)を通して描画される要素は同じオブジェクトとして作成すると描画されない場合があるため、車体と内装は別のオブジェクトとして作成します。

モデルの座標系は、上から見た時の車体の中心かつレールの頂点の高さが原点となり、X軸正方向が車両前方、Y軸正方向が車両左手、Z軸正方向が鉛直方向になります。座標の単位はメートルで、線路は左右それぞれ Y=+0.718, -0.718(標準軌)にあり、架線は Z=5.917 の高さにあります。

1. 車体オブジェクトを作成する

まずは車体オブジェクトを作成します。Blender でファイルを新規作成し、立方体オブジェクトが作成された状態にしてください。この立方体オブジェクトを加工して、車体オブジェクトにしていきます。

ワークスペース「Modeling」に移り、「編集モード」で、面の位置をそれぞれ次の座標に移動させてください。

位置

前面

X = 10.0

前方側の車端位置です。

後面

X = -10.0

後方側の車端位置です。

上面

Z = 3.6

屋根の位置です。

下面

Z = 1.1

床の位置です。

左面

Y = 1.4

右面

Y = -1.4

移動後は次のような状態になります(画像は前方からの視点で、車体左面を選択した状態)。

どちらが前かわかるよう、前面側だけ傾斜をつけましょう。前面上部の辺を選択し、X = 9.0 に移動させてください。

チュートリアルとしては、これで車体は完成とします。実際の MOD 作成では、ここからさらに面を加工して、実際の形に近づけていきます。また、作業の簡略化のために、左右が同じ場合は片面だけ作成し、ミラーモディファイアーを指定することもできます。

最後に、オブジェクト名とメッシュ名を適当な名前(ここでは「Body」とします)に変更してください。メッシュ名は特に制約はありません(おそらく半角英数記号である必要はあります)が、最終的に MOD の構成要素のファイル名としてそのまま使われるため、必ず設定します。

2. 台車オブジェクトを作成する

続いて台車のオブジェクトを作成します。台車は、車体の前後に2つ設置します。ここではまったく同じメッシュを持つオブジェクトを2つ作成するため、片側の台車だけを作成してリンク複製することで、2つの台車を作成します。メッシュを共有することで、最終的なデータ量を減らすことができます(もちろん、前後で台車の形状が異なる場合は、別々に作成する必要があります)。

まず、「オブジェクトモード」で、立方体メッシュを追加してください。

次に、オブジェクトを原点ごと、台車の位置に移動させます。台車オブジェクトの原点は、台車の回転軸の位置に合わせておく必要があります(Z軸位置は任意ですが、Z = 0 がよいと思います)。「オブジェクトモード」のまま、台車オブジェクトを X = 7.0 に移動させてください。

メッシュと一緒に、オブジェクトの原点を示すオレンジの点が移動していればOKです。

続いて、メッシュを整形するために、車体のときと同じように「編集モード」で面の位置を移動させください。原点を移動したため、座標の数値が表している位置が車体と異なることに注意してください。

位置

前面

X = 1.5

後面

X = -1.5

上面

Z = 1.1

車体の床の位置です。

下面

Z = 0.7

左面

Y = 1.2

右面

Y = -1.2

実際の MOD 作成では、ここからさらに加工したり、メッシュを追加したりします。ひとつの台車の中でオブジェクトを分けることもできますが、それぞれ原点を正しく設定することを忘れないでください。

片側の台車ができたので、これをリンク複製します。「オブジェクトモード」で台車オブジェクトを右クリックし、「リンク複製」を選択してください(またはショートカットキー Alt+D)。複製したオブジェクトがマウスに従って動く状態(フロート状態)になるので、右クリックで元の位置に設置してください(失敗して別の位置になってしまった場合は、Ctrl+Z で元に戻せます)。最後に、この状態(複製したオブジェクトが選択された状態)で、オブジェクトを X = -7.0 に移動させてください。

これで前後2つの台車が作成できました。車体の時と同じように、オブジェクト名とメッシュ名を変更してください(おそらく前側の台車オブジェクトが「立方体」で、後側が「立方体.001」となっていると思います)。メッシュは共有されているため、片側のメッシュ名を変更すると、もう片方のメッシュ名が自動的に変わるのがわかるかと思います。

ここでは、オブジェクト名は前側を「BogieF」(Front の F)、後側を「BogieR」(Rear の R)、メッシュ名は「Bogie」としておきます。

3. 車輪オブジェクトを作成する

次は車輪オブジェクトです。現代の一般的な車両を想定しているため、車輪は台車につき片側2つずつを配置します。台車のときと同じく、すべての車輪でメッシュを共有することができますが、ここではさらにミラーモディファイアーを使って作業量を減らします。

ミラーモディファイアーを使うと、ひとつのオブジェクトの中でメッシュを(見かけ上)複製できます。先に述べた通り、独立した動きを持つ要素は別のオブジェクトに分ける必要がありますが、車輪については次のような特徴があります。

  • 同じ車軸の(つまり左右の一対の)車輪は、形状が同じで、回転軸と回転方向も一致する。

  • 異なる車軸の車輪は、形状が同じで回転方向も同じだが、回転軸が異なる(独立して動く)。

したがって、左右一対の車輪は同じオブジェクトにできるので、ミラーモディファイアーで複製できます。左右一対の車輪オブジェクトがひとつできたら、それをリンク複製してオブジェクトを増やします。

実際にやってみましょう。

まず、新しい車輪のオブジェクトを作成します。「オブジェクトモード」で、円柱メッシュを追加してください。追加後、「円柱を追加」メニューで、円の半径を 0.5、深度を 0.12 に設定します。

車輪の場合、円の頂点数はデフォルトの 32 でちょうどよいと思いますが、よりなめらかにしたり、粗くしてデータ量を減らすために、追加時に表示される「円柱を追加」メニューで頂点数をコントロールできます。円柱は多くの面数を持つので、ディテールの必要ない場合やサイズの小さい部品で円柱を使う場合は、頂点数を減らした方がよいです(8程度で十分)。

台車の時と同じように、オブジェクトを原点ごと移動します。オブジェクトの位置を次の通り変更してください(前側台車、進行左側の前方の位置です)。この位置が車輪の回転の中心になります。

X

8.0

前側台車の中心のX座標 + 1.0

Y

0

左右中心(ミラーモディファイアーの中心になる)

Z

0.5

車軸の高さ

続いてメッシュを整形します。まず横向きになっているメッシュを正しい方向に回転させます。「編集モード」にし、「回転」ツールを選択し、X軸中心に90度回転させてください。正確に90度回転させるためには、スナップを有効にする(Shift+Tab で切り替えられます)か、軽く動かしたあとに「回転」メニューで角度の値を入力します。

回転ができたら、位置を左レールに合わせて Y = 0.75 に移動させてください(正確ではありませんが、実際はどのみち加工後に調整が必要になります)。

例によって、実際にはここからさらにフランジやテーパーの加工をしますが、ひとまずこれで一枚の車輪が完成したことにします。

次は、ミラーモディファイアーを追加して左側の車輪を右側にも表示させます。プロパティエディタのモディファイアータブ(スパナのアイコン)を表示し、「モディファイアーを追加」から「ミラー」を選択してください。追加されたプロパティ画面の「軸」のところの「X」のチェックを外し、「Y」にチェックを入れると、右側に車輪が出現します。

「適用」ボタンは押さないでください。適用ボタンを押すと、複製されたメッシュが実体化し、モディファイアーが削除されます。実体化すると片方のメッシュへの修正がもう片方に反映されず、作業が倍になるので、できるだけモディファイアーがある状態で作業することをおすすめします。ここで紹介している手順では、最後までモディファイアーを残したまま MOD を作成できます。

これで左右一対の車輪ができました。最後に、リンク複製を使って、車軸の数だけ車輪オブジェクトを複製します。「オブジェクトモード」に移り、車輪オブジェクトを右クリックして、「リンク複製」を選択してください(フロート状態になったら右クリック)。続いて、X 座標をそれぞれの車軸の位置に合わせます。これを車軸がそろうまで(つまり3回)繰り返します。それぞれの車軸の位置は次のようになります。

車軸

位置

前側台車 前側

X = 8.0

最初に作成したオブジェクト

前側台車 後側

X = 6.0

前側台車中心 (X = 7.0) を対称に、前側車輪の反対側

後側台車 前側

X = -6.0

後側台車中心 (X = -7.0) について、前側と同じ幅

後側台車 後側

X = -8.0

すべての作業が終わると、下のようになるはずです。

これですべての車輪オブジェクトが作成できました。オブジェクト名とメッシュ名を更新したら、作業は完了です。ここでは、オブジェクト名は次のように設定します(先に述べた通り、オブジェクトは車軸単位です)。

車軸

オブジェクト名

メッシュ名

前側台車 前側

BogieF_WheelF

Wheel

前側台車 後側

BogieF_WheelR

Wheel

後側台車 前側

BogieR_WheelF

Wheel

後側台車 後側

BogieR_WheelR

Wheel

4. 内装オブジェクトを作成する

内装オブジェクトは、車体オブジェクトの窓(このあとテクスチャのところで作成します)を通して見えるオブジェクトです。内装オブジェクトというと、座席やてすりなどを想像するかと思いますが、モデルを正しく描画するためになくてはならないのは内壁です。

TpF の3Dモデルにおいて、面は表面と裏面が区別され、裏面は描画されません。したがって、窓を通して覗きこんだとき、そこに内壁がない状態だと、外壁は裏面から見ることになるため表示されず、外壁の向こう側の風景が見えてしまいます。したがって、窓のある車両を作成するときは、かならず内壁を作成しないといけません。

ここでは、手っ取り早く内壁を作成するため、車体オブジェクトを複製し、各面を5cmだけ内側に移動させます。まずは、そのままでは車体オブジェクトの内側が見えないため、ワイヤーフレーム表示に切り替えてください。

次に、オブジェクトモードで車体オブジェクトを選択し、右クリックのコンテキストメニューから「オブジェクトを複製」をクリックします(フロート状態になったら右クリック)。続いて、編集モードに移り、各面の X, Y, Z 座標をそれぞれの内側方向に移動させます。すべてを移動させると、次のような表示になるはずです。

これで内壁の面はできましたが、このままだと車体と同じく外側が表面となっているため、表裏を反転させる必要があります。いまの面の状態を見るため、ヘッダーのオーバーレイメニューから法線を表示させてください。

面の中心点から出ている水色の線(法線)が外側を向いているため、外側が表だということがわかります。すべての面を選択し、ヘッダーの「メッシュ」→「ノーマル」→「反転」をクリックすると、法線が反転し、内側が表になります。

これで内壁の作成は完了です。今までと同じように、オブジェクト名とメッシュ名を変更してください(Interior とします)。

ここまでの内容で、窓を覗きこんだときどのような表示になるか考えてみます。まず、窓は車体オブジェクトに半透明テクスチャで書かれており、車体オブジェクトの外壁は透過して中が見える状態です。外壁の5cm内側にはすぐに内装オブジェクトの内壁がありますが、この面は裏側から見ることになるため、実際には描画されません。したがって、窓からのぞいた時に見えるのは、内装オブジェクトの反対側の内壁になります。

このチュートリアルでは内装モデルに窓は作成しないため、外から窓をのぞいた時に反対側の窓から外を見ることはできません。実際にモデルを作成するときは、内装オブジェクトの窓の部分は切り抜いておき、外が見えるようにするのが自然です。内装オブジェクトにも外壁と同じように半透明の窓テクスチャを張ることもできますが、半透明を2枚通して背景を正しく表示させるには追加の設定が必要になり難しいので、切り抜きで対応することが多いようです。

5. オブジェクトを階層付けする

この手順は重要です。車両オブジェクトや台車オブジェクトが線路に沿って正しい動きをするためには、オブジェクトを階層付けしておく必要があります。具体的には、前後2つの台車グループを作り、台車オブジェクトと車輪オブジェクトを台車グループの子供として設定します。手順を順に説明します。

まず、モードをオブジェクトモードにし、ヘッダーの「追加」→「エンプティ」→「十字」を選択して、エンプティオブジェクト(メッシュを持たない空のオブジェクト)を追加してください。ここで追加したエンプティオブジェクトが前側台車グループの親となります。

エンプティオブジェクトを追加したら、今までと同じようにオブジェクト名を変更してください。ここでは BogieFGroup とします。

次に、エンプティオブジェクトについても、台車の時と同じようにオブジェクトを原点ごと移動します。エンプティオブジェクトを X = 7.0 に移動させてください。

続いて、前側の台車オブジェクトと2つの車輪オブジェクトを、エンプティオブジェクトの子供として登録します。アウトライナーで BogieF、BogieF_WheelF、BogieF_WheelR の3つを複数選択し、さらに最後に先ほど追加した BogieFGroup を選択してください。この状態で、ヘッダーの「オブジェクト」→「ペアレント」→「オブジェクト」を選択すると、3つのオブジェクトが BogieFGroup の中に移動します。

これで、前側台車グループの設定は完了です。同じように、もうひとつエンプティオブジェクト(BogieRGroup)を追加して、原点を設定し(後側台車の原点は X = -7.0 です)、後側の台車オブジェクトと2つの車輪オブジェクトを子供として登録してください。

これで、前後の台車グループを作ることができました。アウトライナーが下のような階層関係になっていれば、ここでの操作は完了です。

6. マテリアルを設定する

ここまでで、ひととおりのオブジェクトができました。最後に、各オブジェクトにマテリアルを設定しておきます。マテリアルは自由に設定できますが、車体・台車・車輪オブジェクトには外装マテリアル、内装オブジェクトには内装マテリアルと、2種類のマテリアルを設定することをお勧めします。

ここで設定したマテリアルは、TpF モデルのマテリアルの単位としてだけ使われます。ここで色や質感、テクスチャなどを設定しても、TpF モデルには反映されません。テクスチャの設定はこのあと、TpF モデルエディタを使って行います。

まずは、外装マテリアルを新規作成し、車体オブジェクトに割り当てます。オブジェクトモードで車体オブジェクトを選択し、続いてプロパティエディタのマテリアルプロパティタブ(丸に市松のアイコン)を開いて、マテリアルの設定画面を表示してください。はじめてマテリアルを設定する場合、空のリストが表示されます。

この状態で「新規」ボタンを押すと、新しいマテリアルを作成してオブジェクトに設定できます。マテリアルを設定し、マテリアル名を設定してください(ここでは Demo_Exterior とします)。

次は前後の台車オブジェクトです。台車オブジェクトを選択した状態で、同じようにマテリアルプロパティタブを開いてください。台車オブジェクトにはさきほど作成した外装マテリアルを設定するため、「新規」ではなくその左の丸に市松アイコンをクリックし、さきほど作成したマテリアル(Demo_Exterior)を選択してください。外装マテリアルが台車オブジェクトに設定されます。

4つの車輪オブジェクトにも同様に、外装マテリアルを設定してください。

最後に、内装オブジェクトに内装マテリアルを設定します。車体オブジェクトの時と同じように、マテリアルプロパティタブで「新規」ボタンを押し、新しいマテリアルを追加してください。マテリアル名はここでは Demo_Interior とします。

以上で、マテリアルの設定は完了です。設定したマテリアルは、アウトライナーで確認できます。

最終更新